鋼材は、プロフェッショナル ヘアシザーの性能を左右する要素のひとつです。刃の形状、熱処理、組み立て、日々のお手入れも、切れ味、刃持ち、耐食性、研ぎ直し後の状態に影響します。
プロ用ヘアシザーに使われる主な鋼材
以下は、プロフェッショナル向けヘアシザーを比較する際によく目にする鋼材名の例です。鋼材名だけで、完成品の硬度や性能が決まるわけではありません。
VG-10 / V金10号
VG10(V金10号)は、武生特殊鋼材株式会社のオリジナル ステンレス刃物鋼です。同社が公開する組成には、クロム、モリブデン、バナジウム、コバルトが含まれ、包丁、ナイフ、機械刃物などの用途が案内されています。
- 公表硬度:武生特殊鋼材はHRC60以上と案内。完成品の硬度は熱処理によって異なります
- 公表特性:耐食性、耐摩耗性、被削性、研ぎやすさ
- 公表用途:包丁、ナイフ、機械刃物
ATS-314
ATS314は、山村製作所が成分を指定し、株式会社プロテリアル(旧 日立金属株式会社)が同社向けに製造する、ステンレス コバルト合金のシザー用鋼材です。山村製作所は、ATS314がATS34とは異なる鋼材であり、詳細な配合は非公開と案内しています。
- 硬度:完成品と熱処理によって異なります
- 公表特性:高い硬度と耐摩耗性
- 公表用途:理美容シザー用鋼材
SUS440C
SUS440Cは、刃物など耐摩耗性が求められる用途に使われる高炭素ステンレス鋼です。完成品の硬度や切れ味は、熱処理、刃の形状、製造品質によって異なります。
- 硬度:熱処理と完成品によって異なります
- 特徴:硬度、耐摩耗性、耐食性のバランスを取りやすいステンレス鋼
- 用途:刃物を含む精密切削製品
コバルト合金
「コバルトシザー」は、コバルトを含む鋼材を使ったシザーを示す広い市場用語で、単一の鋼種や性能規格ではありません。組成、熱処理、完成品の硬度はメーカーやモデルによって異なるため、カテゴリー名だけでなく、鋼材名とモデル仕様を確認してください。
ロックウェル硬度(HRC)とは
HRC(ロックウェルCスケール)は、金属の硬度を示す一般的な指標です。数値が高いほど硬いことを示しますが、刃持ち、靭性、耐食性、切り心地をHRCだけで判断することはできません。
プロフェッショナル ヘアシザーでは、一般に50台後半から60台前半のHRC表記が見られます。ただし、これは一律の理想値ではありません。適した硬度は、鋼材、熱処理、刃の形状、用途によって異なります。
| HRC値 | 特性 | 読み方 |
|---|---|---|
| 55以下 | 比較的低い硬度。研ぎやすい場合があります | 鋼材と製品仕様をあわせて確認 |
| 56–57 | 中程度の硬度 | 鋼材と製品仕様をあわせて確認 |
| 58–60 | プロ用シザーでよく見られる表記 | 刃の形状と熱処理によって特性が変化 |
| 60–62 | 比較的高い硬度 | 靭性と刃先の挙動は鋼材によって異なる |
| 63以上 | 非常に高い硬度 | 製品ごとの確認が必要 |
耐腐食性と日常のケア
ステンレス鋼は「錆びない」のではなく、錆びにくい鋼材です。高級鋼材でも、水分やサロン薬剤に触れたまま適切なお手入れをしないと、錆や変色が生じる場合があります。
特に注意が必要なのは以下の状況です:
- ヘアカラー剤やパーマ液が付着したまま放置する
- 湿ったまま収納する
- 塩分や酸性の物質に触れる
- 長期間使用せずに湿気の多い場所に保管する
使用後は刃を清掃して乾かし、モデルのお手入れ案内に従ってネジ部分へ注油してください。詳しくはメンテナンスのページをご覧ください。
焼入れと熱処理
鋼材そのものと同じくらい重要なのが、熱処理(焼入れ・焼戻し)です。同じ鋼材でも、熱処理の方法が違えば、最終的な硬度や粒子構造が変わります。
イチローのシザーは、出荷前に刃の合わせ、軸のテンション、仕上げを確認しています。現行モデルの鋼材と硬度は、認定販売店で製品仕様をご確認ください。